前の日記から随分と日が開いてしまった。5月以降私は何をしていたのだろう、思い出せる範囲で書いてみる。

5月
六甲山に娘と一緒に出掛ける。音楽好きの大学生になった娘が、無料ライブが六甲山であって、とにかくすごいギターの女の子が来るからお母さん行こう!というので。
六甲山は初めて行く場所でとても爽やかで素敵な場所だったのだけれど、娘が言う「とにかくすごいギターの女の子」Reiちゃんがすごかったことを覚えている。小さな体でギターかき鳴らすその姿に娘と二人でノックアウトされた六甲山のイベント。
その日以降、娘は私の押し入れにしまったままになっていたギターを出してきて、寝ても覚めても練習している。秋になる今となっては、ずいぶん腕を上げていることがドア越しでもわかる。

FLY (CD+DVD)

FLY (CD+DVD)

6月
ひたすらランニングしていた月。キリンジが解散した時のアルバム「Ten」を、発売されてからほとんど聴かず寝かせて?おいたのだけれど(何故自分でそんな選択をしたのかは不明)、ランニングの時にふと思い出して聴いて、懐かしいキリンジワールドに震えながら走る。これぞKIRINJIではなくキリンジの真骨頂と、それからはひたすら「Ten」を聴きながらせっせとランニング。
「きもだめし」のイントロが始まってその幸せな世界の広がっていく感じにワクワク、ほっこりして、そしてその幸せな世界はいつまでも広がっていける世の中だろうとかと不安がよぎったり、でもうららかな春の午後の風景は子ども時代を思い出して懐かしくもあるようでいて。アルバムの中の曲はどの曲も今の私に寄り添うように優しくて、ストイックに短時間で脚の筋肉を増強しようとハードなコースを選択してランニングしているのだけれど、兄弟の曲の優しさとトレーニングのハードさのギャップに自分でおかしくなる。私変なひとだ。

Ten(初回盤)

Ten(初回盤)

7月
大学時代の友人が学会で京都に来るというので18年ぶりに会いに行く。彼女は同級生だけれど2つお姉さん。人目をひくようなものすごい美人で、時々精神的に不安定な人な人だったのだけど、ほんの2か月前に急に思い出したように贈り物が届き、急に連絡を取り合うようになり再会に至ったのだった。彼女はあの頃と少しも変わらない美人で、二人で木屋町のひなびた焼き鳥屋で日本酒をぐびぐびと飲み、まるで25年前の学生時代のことを昨日のことのように語り合った。そして、音信が途絶えていた18年間を埋めるように話した。彼女は独り身で、私の娘が私と彼女が出会った歳と変わらない歳になっていることがピンとこないと言う。それもそう、生まれたての娘の出産のお祝いに駆けつけてくれたのが最後なのだから。話し込んで終電も間に合わず、二人で手をつないで三条通りを歩く。いい夜だった。

8月
屋久島に20年ぶりの旅行。
私と夫は20年前の5月に結婚して、8月の初めての休暇で屋久島に出かけたのだけれど、今年は娘たちと家族4人で行きたいと思っていた。台風、緊急の仕事等で最悪行けなくなることも想定して、必要最小限の予約だけしていたのだが、幸運にも4人で無事2泊3日の旅ができた。20年前は根元でおにぎり弁当を食べた縄文杉も今や遠巻きにしか見れなくなっていたけれど、4人で山に登れたことに感無量。20年ってあっという間のようでいて、くたびれる毎日をなだめすかしながら大量に重ねてきたようでいて。これから先の私たち家族4人の20年はどうなるだろうとか考えると、少し怖くなってしまった。
屋久島から帰ってきて、次の週には仕事の関係で倉敷市へ。1週間のホテル暮らし。被災者、支援者、全国から集まっている立場の違ういろんな人と沢山話をした。私はこれまで倉敷市に行ったこともなければ、被災した町のことも何も知らなかった。それは彼らが私が生まれた町のことを知らないのと同じように。でも、各々の土地にはそこに代々生まれてきた人がいて、その土地に根付いた生活があって、風景があって。一晩のうちに一変した町でもその人たちはそこに住み続けたいのだった。私が倉敷を訪ねた時期は被災者の人々が何かしらあきらめる決断をせまられている時期で、心身の不調なども出てきている様子だった。ただ、私はそういった人の身体の不調を夜な夜な聞くことしかできないのだった。

9月
出向している部下と飲んでばっかり(私が。彼は飲めない)の1か月だった。出向先の職場での彼はイヤイヤいいながらも仕事なのでとかく頑張っていて、出向先の上司からは「とにかく優秀」とか「とにかく仕事ができる」とかお褒めのお言葉をいただくのだけれど、イコールそれだけ彼にプレッシャーやストレスがかかっている状況で、そのはけ口として夜な夜な私に長文のメッセージが送られてくるのだった。私が聞いたところで出向先から逃れられるわけではないので、「気分転換にスペシャルなごはん行こう」などとなだめすかして出かけるのだけれど、結局彼のしんどい話を聞くことがしのびなくなってきて、たわいもない話を始めて、お酒がすすみ、そのうち下戸の彼に持論を繰り広げるなど、最悪のパターンを繰り返す有様。それでも、また行きましょう、また行きましょうと言ってくれるかわいい部下に愛想つかされないようにしないとと心配になる軽い二日酔いの朝。

10月
組織の再編成があって、部下が増えた。増えた部下にもくまなく愛情を注がないといけないので、管理する仕事も増えるし、結構不安でいっぱいだ。私は元来直球人間なので駆け引きのできない人間だけれど、上司だろうが部下だろうが、また第三者への見せ方にせよ、駆け引きまでにはいかないけれど、最近は少しは後先考えて調整しながら、様子見ながら仕事をやるようになった。そうしないと自分の身が持たないことをやっと覚えたようだ。でも、嘘はつけないので苦労している。7人の部下(年上の女性、体の大きな年下の男たち…)にせっせせっせと愛情を注がねばならない。事情ありの年度途中の組織編成なので、上司から間違いは許されないからな、組織が倒れないようにうまくやれよとのお言葉。そんなにプレッシャーかけるなよ〜と心の中で突っ込みながら、いかに短い時間で集中して仕事をまわすかばかり考えている。こんなときにまたまた「Ten」の「黄金の舟」ばかりリピートして聴いている。心に刺さった棘は溶けて消していかないと身が持たない。

風呂はいいね 裸だから
白い泡と白い湯気と
棘ささってても とけて消えていくよ
みんなそう、ただのヒトだよ

西陽に染まれ 湯舟は黄金色