自転車で通りをうろうろしていると、空中にふわふわとポプラの綿毛が漂っている。たくさん、たくさん、たくさん。五月のなまぬるい風が吹き始める頃になると毎年こんな光景を目にする。今年ももうそんな季節。やがて梅雨がやってきて、そのころには私はもう一つ歳をとることになるのだなあ。
最近の私は水泳にかなりはまってしまっている。もうすぐ35歳になる私が、いい歳をして何を今更なのだけれど。なにがいいって泳いでいる間は無心になれることだ。今日もわずかに空いた時間にプールに出かける。
クロール、クロール、クロール。もう前に進むことしか考えない。つむじを先頭に向けて、先に先に先に。聞こえるのは水をかく音のみ。
水にひたすら浸かっていると、私の体の中から灰汁みたいなものが溶け出していって、代わりに私を構成している一つ一つの細胞が新しい水を取り入れて活性化していくような、そんな感じがする。
後半は透明な天井から透けて見える飛行機雲をぼんやりと眺めながら背泳ぎを数本。
さっと着替えて外に出て、自転車で駆け下りる坂道。深く吸い込む空気のなんと気持ちの良いことか。ああ、この時間があれば、いろんな面倒なことはどうでもよくなってしまう。
今日の音楽は「14時過ぎのカゲロウ」
飛び込み台に立った瞬間に 僕が僕であるということを 忘れられるんだ
欲しいものは見えている 水の中に漂っている それは身体だけが知っている

十四時過ぎのカゲロウ

十四時過ぎのカゲロウ