夫の職場の一つ上の先輩Tさんがたったひとりで死んだ。朝に心臓が止まっていたとの事だった。43歳だった。
T先輩と私が同郷というのもあってか、子どもが産まれるまで夫と三人でよく遊んだ。子どもが生まれてからは、週末魚釣りに出かける先輩からきまって連絡が入り、包丁を研ぎ、大漁にあやかるのが日課になっていた。
賢くって理屈っぽいところ、九州男児の血の匂いがプンプンするところがあったから、限られた人との付き合いしかなかったけれど、私たちはなぜか三人で仲良くやってた。ついこのあいだの正月だって大人三人で贅沢をしようと、Tさん行きつけの祇園のお料理屋さんに行って新年のお祝いをしたところだったのに。こんな運命が待ち構えていたから、Tさんは家族も持たず、好き勝手にやってたのかな、なんて夫と話す。
お葬式のために熊本に出かけた夫がもうすぐ帰宅する。子どもたちは、「お父さん、出張?」なんて聞くから、「ちがう、Tさんのお葬式!」というとぽかんとしていた。「え?あのTさんが死ぬはずないやん!」なんていうから、今頃もうTさんは焼かれて灰になってしまてるんだと子どもたちに伝えながら、ああ、そうか、彼はもうほんとうに灰になってしまったんだ、と私自身、初めて彼の死を実感する。
これからの私はどのように毎日過ごしていくべきなのか、考えこんでしまう。