id:popholicさんところでビブラフォン奏者の香取良彦さんの名前を見かけて、ふと懐かしくなる。
10年ほど前彼がトリオを組んで(確か納浩一さんというベーシストの方と布川俊樹さんというギタリストの方が一緒だったように思うのだけれど…)当時私が住んでいた小さな街に唯一あるジャズ喫茶でライブをしてくれ、私も招待してもらったことがあったので。
その手の音楽の知識はたいして無い私だけれど、納浩一さんという華奢な男性から紡ぎ出されるグルーヴ感溢れるベース音に乗っかったバイブ音とギター音が仕事帰りの疲れた身体とアルコールで程良く緩んだ頭に響いて心地良かったことはしっかり憶えてる。あとすぐ目の前で繰り広げられるセッションはすごくエキサイティングで、奏者達の「お前、そうきたか、じゃ俺はこうやったる!」みたいな悪戯っぽい視線までもが手に取るように感じられるから、瞬きも忘れて見入ってたのだった。
ライブの後には興奮冷めやらぬ私に店長が「chihiryouちゃん、何かしゃべってこい!」なんて言うのだけれど、気の利いたこと一言も思いつかず、おずおずと手を差し出して「良かったです…」と言うのが精一杯だったんだよなあ。
ああ、あのころは今考えるとおかしいと思うくらい周りのみんなにかわいがっていただいた。みんな厳めしい顔をした気難しそうなおじさんや、音楽オタク、競馬好きの男の人たちだったけれど、心地の良い音楽を聴かせてくれたり、今度のG−Ⅰはこの馬がくるとかあてっこしたり、くだらない下ネタにつきあったり、お酒を奢ってもらったり。同僚の女の子と色恋沙汰の話しをするよりもよっぽど私は心地良かったんだ。
ただ一つ気を付けていたことといえば女にならないようにしてたことくらいかなあ。すっとぼけたふりして、他人の気持ちに気付かないふりして。そうそう、そのころから私はそういうことに関しては面倒くさがりで冷たい人だったんだ。
ああ、久しぶりあの店のハイボールが飲みたいと思う夜。